酪農大国フランスへ単独研修。

2012.年3月から数件の農家さんを訪ねチーズの製法を学んできました。
リヨンを拠点にブルゴーニュ・アルザス・ラングドックを訪ね歩き
まず、始めに訪れた山羊農家はRigottecondrieu(リゴット・コンドリュー)という サーネン山羊のチーズを製造されている農家さん。
乳酸菌と少しの凝乳酵素を添加して作るチーズはじっくり時間をかけて乳を凝固させ、 固まった乳をそのままモールドに詰めるというシンプルな製法のチーズでした。
シンプルでありながら乳酸菌添加のタイミング、型詰め作業、熟成環境はシビアに 管理されており、酸凝固チーズの奥深さを改めて感じました。
ここは山羊農家さん。当然山羊の搾乳から毎日スタートです。前晩のミルクと翌日のミルクを混ぜてチーズを作ります。
朝からは搾乳そして製造、昼からは山羊の世話、夜は搾乳というサイクル。毎日大変そうに思いますが、時間に拘束される事のない余裕をもった環境は私の生き方の理想となりました。
次に訪れたのはアルザス地方にあるMunster(マンステール)というチーズを製造されている農家さん。外皮はオレンジ色をした通称ウオッシュタイプと言われるチーズです。
ここの地方はジャージ・ヴォージエイズという牛さんのミルクを使い製造されていて、マンステール以外にフレッシュなものから硬質タイプまで数種類の製法を学ぶ事が出来ました。
熟成チーズには必ず熟成庫が必要です。チーズ農家さん、チーズショップには概ね地下の熟成庫が完備されており温度・湿度帯が一定に保たれている環境でチーズが微生物の力を借りゆっくりと時をかけ熟成されていて、長年にわたって有用な菌が住みついた地下カーヴは静かでしっとりとした空気感があり香りも含め全てが神秘的にさえ思える環境です。
ウオッシュタイプ・・名前のとおりチーズを洗います。
型から出したチーズを始めはブラシでこすり洗い、その後2日に1回程度反転作業を行いながら塩水でチーズの表面を手で優しくこすりながら熟成を進ませます。
すると日に日に外皮はオレンジ色へと変化し、独特な香りへと変化していきます。
フレシュから徐々に変化していくチーズのお世話が出来て、毎日興奮ぎみな研修となりました。
その後、農家さんの紹介でオートサヴォワへ行きスイスの国境近くのアボンダンスで研修を受ける事に。
サヴォワにはアボンダンス・タリーヌ・モンベリアルト種という山の環境に適した牛が飼育されていて見渡す限り牛と山たまに山羊というまるでハイジの世界でした。
ここで学んだチーズはChevrottin(シュブロタン)というアルピーヌ山羊のミルクでチーズ 120リットルの巨大な銅製の鍋は昔ながらの製法。熱伝導が良いのでチーズ作りに 慣れれば理想的な鍋です。そして銅は有害な菌を死滅させる働きもあるそうです。
搾乳からの全ての工程を任せて貰え、ミルクの状態からチーズになるまでのタイミング全てを身体で感じる事ができました。
なぜその土地にはこのチーズなのか・・・。製造方法は勿論ですが、サヴォワという土地に住む人達と触れ合った事で少しその意味が分かったように思います。その場所で生きようとした人達が考えだした知恵は本当に素晴らしい。そんな歴史背景を感じながらチーズ作り以外にもサヴォワならではの素晴らしい経験を沢山させて貰えました。
その後、日本の研修チームと合流しオーベルニュ地方へ。チーズ工場見学や熟成士のレクチャーを受ける事ができ、大規模の工場で行われる工程は圧巻で数百人ものスタッフが慣れた手つきでどんどんチーズを作り、非常にスムーズに製品化されていました。規模的には真似は出来ないですが、手際の良さや効率性は非常に勉強になりました。
研修も終盤。研修当初からずっと行きたかったコルシカ島へ。コルシカはbrocciuというチーズ発祥の地。チーズを作る時に出る水分(乳清)から作るホエーチーズで再び熱を加えて固まった蛋白質をすくい取るという製法はシンプルなもの。出来立ては格別に美味しくて、ちょっとつまみ食いは作り手でしか味わう事の出来ない贅沢な瞬間。羊乳ミルクのやさしい甘さがくちの中に広がり、口どけもよくて・・。なんとも幸せになれるチーズ。もはやチーズではなくスイーツのようでした。
作業をしている最中は大きな鍋にホエー100℃近く加熱しているので終わった頃には汗だく・・・。
思った以上に重労働です。ホエーを加熱するだけとは言えこれもまた加熱温度や攪拌の方法など絶妙のタイミングで工程を進ませている作り手は正に職人。カッコ良かったです。。。
コルシカにはほとんど牛はいません。村を歩いていても羊や山羊が大半。
Brocciu以外にも羊製の硬質タイプやウォッシュタイプのチーズも盛んに製造されていて、フランス本土は勿論。イタリアなど他国にも輸出していて島のチーズ事情産業は非常に豊かなものだという印象を受けました。
渡仏の間、数多くのチーズ製法を見てきて、自分が今まで作っていた製法と大きく違う点もあり、実践を通して理論的に納得できた箇所は山のようにあります。
これからチーズ作りを再始動していく中でどんどんチーズ作りに挑戦していけば新に疑問も生まれます。今回の研修ではそんな時こそもっとシンプルに考える事を学べました。
季節やエサによっても日々変化するミルクの状態。チーズに変化させた時、毎回同じ物が出来るわけがありません。チーズ作りは難しい。難しいからシンプルに。
そして数多く出会った現地の人々にも感謝です。
本当にホントに皆さん親切で、そんな人間との関わり方の大切さも学べた研修でした。
今のタイミングで出会えた事、一生の宝です。
私は酪農家で良かった。
野菜を食べる感覚で農産物であるチーズを日本の文化に浸透していきたいですね。
乳製品をより身近なものに。おいしいですもんね。
あれもこれも一気には出来ませんが、少しずつ形にしていきたいと思います。